晴れる屋といえば「カードショップ」を思い浮かべる方がほとんどではないでしょうか。
全国にマジック専門店を24店舗展開し、2021年にはポケカの専門店もオープンしました。
でも実はカードショップだけではなく、飲食店も展開しています。

その名もTCG BAR 飲める屋。(※現在は営業しておりません)

カードゲームが遊べるバーとして毎日たくさんのお客様にご来店いただいています。
店長(※2023年3月10日現在)の寺本昌司(テラモトショウジ)さんは、プロツアーにも複数回参加している元競技プレイヤーであり、お酒の「持ち込み放題」や「おすそ分け」などユニークな取り組みで話題になった『居酒屋 ガツン』(現在は閉店)の元店長でもあります。

今回の「Leader’s Pick Up」では、異色の経歴を持つ寺本さんがどうして「飲める屋」店長になったのか、飲める屋の今後のビジョンなど、ガッツリ語っていただきました。

■プロツアーに出るために高校中退

―――まずは簡単に自己紹介とマジック歴について教えてください。

初めまして、寺本昌司(テラモトショウジ)です。中学生の時にマジックを始めて、高校生くらいから競技マジックに取り組むようになり、途中で飲食店のオーナーを挟みながら今は飲める屋の店長をやっています。

僕がマジックを始めたのは中学生の時で、『ウルザズ・サーガ』がスタンダードで使えた頃ですね。
最初は友達同士でカジュアルに遊んでいたけど、高校生になって地元の公式大会に出るうちに優勝もできるようになりまして。
そこで地元の中でも競技志向の強い人との交流が生まれてプロツアーの存在を知りました。

当時は全国でPTQ(プロツアー予選)が開催されていましたから、とりあえず予選に参加するために地元の熊本からバスで福岡まで遠征しました。
ところが、いろいろ認識が甘く……。

まず遅刻してマッチロスをくらい、そして次のゲームでデッキリストの記載ミスでゲームロスをくらうという……。
優勝する気でわざわざ福岡まで来たのに!(笑)

どうせなら決勝まで見ていこうと最後まで残ってたんですが、決勝ラウンドの空気感がとても新鮮で、刺激的で、正直興奮しました。それで「僕もその場にいきたい!」と思って、通ってた高校やめました。

―――えーっ!?プロツアー目指すために高校やめたんですか!?

そうなんですよ。高校2年生の時ですね。県内でも上から3、4番目の進学校だったんですが、「プロツアーに出るためには高校行ってる場合じゃない」って思ったんですよね。

それからアルバイトしつつ、大阪や東京にも遠征してプロツアー予選に参加して、そこで当時の強豪たちとも交流するようになりました。トモハル君(晴れる屋前代表 齋藤友晴氏)やヤソ(殿堂プレイヤー 八十岡翔太氏)と知り合ったのもこのタイミングです。

なんやかんやで初めてプロツアーに出れたのが『プロツアーロサンゼルス05』。残念ながら結果は惨敗でした。
でも僕自身はめちゃくちゃ楽しかったし、普段お世話になってて一緒にプロツアーに参加した先輩から「今回のプロツアーはいつもより面白かったよ。おまえみたいな若い奴が来てくれたから。次のプロツアーも絶対来いよ」って言ってもらえたのはとても印象に残っています。

その後頑張って2回目のプロツアー権利も獲得したりと競技活動を続けていたんですが、いろいろな人の話を聞くほど専業プロとしてやっていくのは厳しいと感じて……自分で焼き鳥屋を立ち上げ、途中で「居酒屋ガツン」に業態変更し、今は「飲める屋」の店長を務めています。

■グループでもおひとりさまでもカードゲームが楽しめる場所

―――マジック専門店の晴れる屋やポケカ専門店の晴れる屋2は知っていても、BARの晴れる屋、「飲める屋」を知らない人は結構いらっしゃるかと思います。あらためて飲める屋について簡単に説明をお願いします。

飲める屋はカードゲームが遊べるTCG BARです。場所は東京、高田馬場。晴れる屋トーナメントセンター東京から歩いて5分かからないくらい、すぐ近くにあります。
元々MTG BARとしてオープンしましたが、2023年3月10日からTCG BARになりました。

多くのカードショップで飲酒はNGですが、飲める屋なら店内でお酒を飲みながらゲームをしたり、他のお客様と会話が盛り上がったりと、カジュアルにカードゲームを楽しめます。


―――お客様は店内でどういう遊び方をすることが多いですか?

本当にいろいろですね。割合でいうと統率者が多いけど、モダンやレガシーのような構築はもちろん、プレリキットを開封してシールドを楽しむ方もいます。昔の世界選手権で活躍したデッキも自由に使っていただけるので、「子どものころやってたけど今のマジックはよくわからない」という人も、当時を思い出して遊ばれたり。

―――ということはグループで来店される方がほとんど?

まったくそんなことはないです。ひとりで来られる方もたくさんいらっしゃいますよ。

飲める屋のオープンチャットがあるのでそこで相手を探したり、スタッフがお声がけしておひとりさま同士で交流するパターンもよくあります。

飲める屋のテーマは「カードゲームプレイヤーの交流を生む」。

最近始めた方も、昔ちょっとだけ触っていた方も、おひとりでもグループでも、どなたでもカードゲームとコミュニケーションを楽しめます。

■カードゲームとBARのシナジー

―――寺本さんが飲める屋に携わるようになったのはどういう経緯があったのでしょうか?

ガツンを4年、焼き鳥屋も合わせると8年くらい経って正直「そろそろ新しいことやりたいなぁ」と思ってたとき、晴れる屋役員の皆さんがガツンに遊びに来てくれたんですよ。

その後も何度か飲みに行っていろいろ話を聞いているうちに、「晴れる屋でBARをやってみないか?」とお誘いを受けました。

「晴れる屋としてもTCG BARみたいな形態に非常に価値を感じている。そういう業態を新しく展開していきたい」

「事業の責任者は僕(寺本)がいいんじゃないか、もし自分の事業に一区切りつけて新しいことやりたいって思っているなら来てほしい」

そんな感じのことを言われたのを覚えています。

僕の中でも話を聞いているうちに「自分ももっとマジックに関わりたい」という想いが強くなって、最終的に自分の事業を畳んで飲める屋の責任者を務めることになりました。

―――話を聞いた時に、自分と飲める屋にはどんなシナジーがあると思いましたか?

「(自分がマジックをやっていた頃と比べると)マジックプレイヤーが直接交流する場所があまりない」というのを、昔馴染みのプレイヤーからよく聞いていました。

カードショップが増えて競技寄りのイベントは開催されているけど、カジュアルにマジックとコミュニケーションを楽しむ場所は少ない。周りに一緒にマジックする人がいなかったり、復帰したばかりでどうやってマジックを楽しんだらいいかわからない人たちって結構いると思うんですよね。

だから飲める屋という場所ができれば、そんな人たちをサポートできるんじゃないかと。

あと接客に関しても、カードショップだとカードの売買が第一の目的になるので、深く踏み込んだ接客は中々難しいと思います。
その点、飲める屋ならプレイヤー同士が交流しやすくなるし、店内に長く滞在されるのでスタッフとのコミュニケーションの量も増え、結果的に距離の近い接客ができる。

晴れる屋ができない役割を飲める屋ならできる。そう思いましたし、今もそれを意識してお店を運営しています。

■コロナに悩まされた3年間

―――飲める屋がオープンしたのは2020年6月19日。新型コロナウイルスによる第一回緊急事態宣言が明けたタイミングでのオープンとなりました。その後も定期的に緊急事態宣言の発令、自粛要請があり、苦労された部分も多かったのではないでしょうか?

本当に「どうすればいいんだ」って悩まされた3年間でした。

お客様も楽しく遊びたいのにそれを許さない時勢であったりとか、営業時間の制限とか、お酒を提供できないとか、いろいろなことがあって盛り上げていきたいんだけどそれが叶わず時間が過ぎていき、正直苦しかったです。

もし僕が個人でやってたとしたら、「今じゃない」と思ってお店を畳む決断をしていたかもしれません。

その点、晴れる屋の役員たちがこの業態に価値を感じてやり続けてくれたことには感謝しています。

全国への出店やビル1棟丸ごとポケカ専門店もそうですが、晴れる屋はカードゲームを盛り上げるためには積極的にリスクをとってチャレンジする会社です。僕個人としてもチャレンジする姿勢は好きなので、これからも飲める屋としていろいろなことをやっていきたいですね。

■50代のプレイヤーも20代のプレイヤーも気軽に交流できる空間

―――それでは飲める屋の今後の展望について教えてください。

新しい取り組みをたくさん始めたいなと思っています。

例えば会員制の飲める屋コミュニティ。
会員同士がコミュニティの中で会話を楽しんだり、コミュニティメンバー限定の交流イベントを飲める屋で開催したりと、カードゲームとコミュニケーションをもっと多くの人に楽しんでもらえるようなかたちを目指しています。

飲める屋の価値である『プレイヤー同士の交流を生む』。今後はそれをもっと強めていく予定です。

―――ちなみに10年後の飲める屋はどうなっていてほしいですか?

10年後の飲める屋は名前も変わっているかもしれないし、場所も変わっているかもしれない。でも、「ゲームを楽しむプレイヤーたちの交流の場」であるということは変わらないでいたいですね。

10年経ったら僕はアラフィフですし、今ポケカで遊んでいる10歳の子も一緒にお酒が飲めるようになっていますから。50代のプレイヤーも20代のプレイヤーも気軽に交流できる空間だと最高だなと思います。

もちろんそういう未来を迎えるためには、今の僕たちの努力とお客様のご協力が絶対必要なので、目標に向かって真摯に日々過ごしたいですね。

―――最後に、利用してくれる皆さんにメッセージをお願いします。

このコロナの中で潰れなかったのは来てくれるお客様、気にかけているお客様のおかげです。3年分の鬱憤を晴らすように春以降は準備を進めているので、ぜひ期待していてください。また、この記事を読んで少しでも興味を持った方は、ぜひ一度飲める屋に足を運んでみてください。

―――ありがとうございました。